薬剤師が抗菌薬の処方支援に関わると感染症診療を理解しないと治療の流れがわかりません。
でも、たくさん本があってどれで勉強すればいいか迷いませんか?
できる薬剤師になりたければ、大曲貴夫 先生の名書「感染症診療のロジック」を読もう!
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抗菌化学療法認定薬剤師、NST専門療法士で医療専門書の購入歴300冊以上です。
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「感染症診療のロジック」で感染症診療が理解できる!
感染症の処方支援をするためには、感染症治療の理解が必要です。
- 感染部位
- 微生物
- 抗菌薬
この3つの関係を考えないと感染症の治療はできません。
医師の鑑別診断、考え方も知ることができるので
本当に感染症?
よくならないときの原因は?
など、悩んだときに考えることがわかります。
ある程度、勉強して読み直すと、「ああ、こんな良いことが書いてあったんだな」って再確認できます。
著者の大曲先生は、静岡県立静岡がんセンターの感染症科立ち上げに関わっていました。
ブログ執筆時点では、国立国際医療研究センター病院に所属しAMR対策でご活躍されてます。
この本の内容が理解できれば、抗菌薬の処方支援がデキる薬剤師になれる!
感染症診療の考えかたがわかる
感染症診療にはロジックがあります。
ポイントは5つです。
- 患者背景
- 感染臓器
- 原因微生物
- 抗菌薬の選択
- 適切な経過観察
患者背景
患者背景は重要です。
まず年齢、基礎疾患から原因微生物を絞ることができます。
たとえば、乳幼児と成人では髄膜炎の起因菌の頻度が異なります。
肺炎でも既往歴があるかないか、COPDの既往がある、アルコール多飲する方など患者背景で起因菌が変わります。
次に曝露から微生物を予想することができます。
最近、海外の渡航歴があれば流行している感染症に罹患するリスクがありますね。
まわりではやっている感染症があればそれも可能性として考慮します。
感染臓器
熱がでたから抗菌薬を使う。
CRPが高いから抗菌薬を使う。
これでは、原因や感染臓器が不明なため治療が迷宮入りしてしまう可能性があります。
まずは、患者さんの症状から考えられる疾患を想起して除外していく。
原因や問題となる臓器がわかれば感染症でろうがなかろうが、問題解決の糸口が見えてきます。
原因微生物
たとえば、既往歴のない肺炎の起因菌は次の3つが多いです。
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌
- モラクセラ・カタラーリス
これを知らずに肺炎治療をしようとすると、起因菌が予想できないから広域スペクトルの抗菌薬で毎回治療するという、抗菌薬適正使用と逆行する流れになります。
少しでも確率を上げるために有用な方法は、患者背景や感染臓器から起因菌を考えることです。
起因菌を推定、同定するために重要な検査があります。
グラム染色と培養検査です。
グラム染色は喀痰や尿を染めて色、形から菌を推定することで起因菌を予想、除外しやすくします。
これだけで、抗菌薬の選択に自信がでてきますよ。
培養検査は起因菌を同定するために必要な検査です。
培養なしで抗菌薬を選択するのは無効だったときに闇雲に広域化するしかない迷宮入りが待っています。
薬剤師なら、お薬手帳がなく薬剤名もわからない状態で既往歴から持参薬鑑別をする状況に近いですね。
それくらい培養検査は重要です。
抗菌薬の選択
抗菌薬の選択は適正使用のために重要です。
原因微生物を特定し、できるだけ狭域スペクトルで最大の効果が期待できる抗菌薬を選択ます。
広域スペクトルだから“強い”、狭域スペクトルだから“弱い”というわけではないので誤解しないようにしましょう。
後述しますが、“empiric therapy” 、 “definitive therapy” の考え方は大事です。
適切な経過観察
感染症の経過を知っていれば、惑わされることがありません。
たとえば、肺炎であれば、解熱して喀痰や咳が減り、呼吸数が下がり、酸素化が良くなって呼吸困難の症状も緩和されます。
正しい治療経過を知っていれば、白血球やCRPの下がりが悪いからといって抗菌薬を必ずしも変更しなくても大丈夫なケースがあります。
単純性の腎盂腎炎は、抗菌薬治療を開始して72時間は熱が続くことがあります。
そのため熱があってもバイタルが悪化していなければ、抗菌薬を変更せず経過観察して様子を見る勇気が必要です。
これは“適切な経過観察”にあたるケースもありますね。
根拠をもって抗菌薬を選択できる
患者背景、感染臓器、原因微生物を考えれば、抗菌薬選択の根拠が説明できるようになります。
抗菌薬の治療には2つの考え方があります。
- empiric therapy
- definitive therapy
empiric therapy
原因微生物を予想して、有効な抗菌薬を選択する治療方法です。
先ほどの肺炎の起因菌を例にすると、患者背景から想定される起因菌をカバーする抗菌薬を選択します。
状態によってはやや広域な抗菌薬の使用も致し方ない場合があります。
definitive therapy
特定された微生物に対してもっとも有効な抗菌薬を選択する治療方法です。
できる限り狭域な抗菌薬を使用するので、適正使用の点から重要です。
empiric therapy で広域なカバーをするために抗菌薬を2剤併用すると副作用リスクが高くなる場合があるので、そういった点からも有用ですね。
臓器別に感染症が勉強できる
よくある尿路感染症、肺炎や軟部組織感染症などから、腹腔内感染症、敗血症や抗菌薬の副作用まで幅広い内容です。
医師は診断をするために、見逃してはいけない疾患を除外していきます。
特に高齢者は、症状をうったえることができなかったり、症状に乏しかったりするケースも多いため診断に難重することもあります。
臓器別の感染症を勉強できることは薬剤師も感染症の処方支援にも有用です。
感染症と関わることがない診療科はほぼありませんので、どこの職場でも薬剤師は関わります。
抗菌薬の使用が適切か判断するために、経過に合わないときに似たような症状を呈する疾患を知っていれば不要な抗菌薬を減せます。
こういった視点でも抗菌薬の適正使用に関わることができますよ。
抗菌薬の使い方や敗血症はアップデートが必要です
アップデートが必要な領域は、最近の本、論文などをご確認ください。
たとえば、抗菌薬の投与方法、期間なども最新の論文でアップデートされてます。
敗血症の定義、ガイドラインは日本集中治療医学会をご確認ください。
2019年までの敗血症アップデートは「ブラッシュアップ敗血症」がおすすめ!
感染症の「基本」はいつまでも変わらない!
感染症診療のロジック、おすすめです。
読み終えたらこの本もおすすめ
今までの感染症の書評を読んでくださった方は、そろそろポケットに入るマニュアル本がほしい!と思うでしょう。
次はおすすめのポケットサイズのマニュアル「感染症プラチナマニュアル」を紹介します。
薬剤師は「感染症プラチナマニュアル」をポケットに入れておこう!
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