薬剤師だから添付文書はわかってるよ!ってぼくは思ってましたが、
「薬をもっと使いこなすための添付文書の読み方活かし方」を
読んでると知らないことが多かったです。
著者が行政機関、医薬品医療機器総合機構(PMDA)を経験されてるので、
添付文書の記載内容が決まる背景がわかって勉強になります。
薬価収載、薬価が決まる流れはDI業務に役立つし、
公知申請の言葉を知ってるけど、しっかり調べたことがなたったです。
"ブルーブック"は恥ずかしながら初めて知りました。
添付文書の新しい改定記載要領が2019年4月から運用開始になりました。
その点にも触れてくれてるので要チェックです!
新人薬剤師だけでなく、すべて薬剤師におすすめです。
- 対象: 新人、若手薬剤師
- おすすめ度(5段階):★★★★☆
- コスパ:(5段階) :★★★★☆
添付文書はよくわかってる!って方もいるでしょうから
★4としました。
おすすめポイントを3つ
- 2019年4月からの改定記載要領について説明あり
- 承認まで流れ、薬価決定の背景がわかる
- 高齢者、妊婦、授乳婦、小児の添付文書記載の背景がわかる
添付文書の記載内容が決まるまでの流れがわかると、もっと活用できるようになりますね。
逆に考えると添付文書の限界を知ることもできるということです。
勉強になったことをまとめます。
勉強になったこと
薬価収載
- 新医薬品は、年4回:2、5、8、11月
- 部会報告品目・新キット製品では年2回:5、11月
- 再審査終了期間の剤形追加品目などは後発品として、薬価収載は年2回:6、12月
薬価が決まるまで
多くの医薬品は承認された後、
製薬会社と厚生労働省で薬価の交渉がはじまります。
双方の提示する薬価にずれがあれば、
調整に時間がかかり、販売まで時間がかかることがあります。
薬価の調整がついても
中央社会保険医療協議会(中医協)で健康保険を適応するべきではないとされると薬価基準収載されません。
なお、薬価基準未収の多くは、最初から製薬会社が保険適用を申請せず自由価格で販売されます。
一物二名称の必要性
原則として1つの販売名に対して承認が与えられます。
ただし、同じ成分でも別の販売名になる場合があります。
効能・効果や対象患者、剤形が異なる異なる場合です。
その理由は、処方・調剤の混乱を避けるためや薬価を別に設定する必要がある場合です。
たとえば、クエチアピンフマル酸塩は
ぼくは、ビプレッソ®徐放錠は聞いたことがありませんでした。
内科、外科メインだと持参薬確認でしか目にすることがないですね。
ゾニサミドのエクセグラン®錠100mgとトレリーフ®OD錠25mgは薬価がかなり違います。
トレリーフ錠は抗パーキンソン病薬として開発を行い、新たな製剤として申請・承認され、抗パーキンソン病薬であるセレギリン塩酸塩を類似薬として薬価算定が行われました。(大日本住友製薬のHPより)
また、同じ製薬会社、同一規格での複数名称は認められません。
これは混乱、ミスにつながるからでしょうね。
その他、目にすることが多いのは、
他にも色々あります。
審査報告書
起源、開発の経緯、品質や用法・用量、有効性、安全性、適合性調査結果などがまとめられてます。
PMDAの医療用医薬品情報検索から検索して入手できます。
DI担当者が採用薬を決める際に役立ちそうです。
公知申請
言葉と意味をざっくり知ってましたが、しっかり調べたことがありませんでした。
わかりやすくいうと適応外使用だけど、保険適応しますよってことです。
厚生労働省の説明は以下の内容ですね
添付文書に記載された効能・効果、用法・用量以外の目的や投与方法によって使用される、いわゆる適応外使用で、 十分な科学的根拠があるものについては、より適切に使用されるために、適応外使用の効能・効果、用法・用量について約次承認を受けるべきと「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱について」に記載されている。
以下の場合は、該当し公知申請と認められる可能性がある場合は、治験の全部または一部を省略して承認申請することができる可能性がある。
- 外国(本邦と同等の水準にあると認められる承認の制度又はこれに相当 する制度を有している国(例えば、米国)をいう。以下同じ。)において、 既に当該効能又は効果等により承認され、医療における相当の使用実績が あり、その審査当局に対する承認申請に添付されている資料が入手できる 場合
- 外国において、既に当該効能又は効果等により承認され、医療における 相当の使用実績があり、国際的に信頼できる学術雑誌に掲載された科学的 根拠となり得る論文又は国際機関で評価された総説等がある場合
- 公的な研究事業の委託研究等により実施されるなどその実施に係る倫理性、科学性及び信頼性が確認し得る臨床試験の試験成績がある場合
慎重投与
添付文書記載要領の改定に伴い、「慎重投与」の項目が2019年4月以降の添付文書から削除され、
今まで「慎重投与」に記載されていた内容は、「特定の背景を有する患者に関する注意」の項目に記載されます。
添付文書記載要領の改定は、2019年4月1日から2024年3月31日までの5年間の経過措置がもうけられ、
その間は、新旧の記載要領に基づく添付文書の両方が医療現場に存在します。
個人的な印象は、薬物動態、薬理作用から想定できるケースや、当該薬剤で報告がなくても類似薬で報告があればたいてい「慎重投与」の項目に記載される印象です。
添付文書に記載されていますから…ではなく、薬剤師として判断、意見がいえるように経験や知識をつけなければなりませんね。
副作用
RMPは、医薬品リスク管理計画のことです。
欧州で2006年、日本で2012年に導入され、医薬品の特徴や懸念されるリスクを評価し、どのように対応するか記載されてます。
具体的な活用方法は、各医療機関の薬剤部で模索している印象です。
有益な内容もあるので、ぼくも実務に活かす方法を考えてますが、個人に任せている状況です。
RMPって何ですか?って同僚もいってるので、まだまだ浸透していないのでしょう。
以前は、RMPがなかったので副作用のリスクの考え方が不明でしたが、
副作用のもっともらしさを考える材料になります。
「添付文書に記載されていないから副作用ではない」ではなく、
RMPを調べて未知の副作用かもしれないという視点をもち、適切な副作用報告ができるようになり、医薬品は薬剤師が育てるという意識が重要です。
「医薬品・医療機器等安全性情報」は、新たに重篤な副作用と追加された項目の具体的な症例がのっているので勉強になります。
薬剤師の世界でも症例ベースの報告書が増えているので具体的なイメージがしやすくなってきてます。
副作用の考え方で大事なことが1つあります。
添付文書に副作用〇〇が●●%でおこるって書いてるから
この症状は副作用です!というのはちょっと待って!
副作用と断言するのはすごく難しいです。
この考え方は「3ステップで推論する副作用のみかた・考えかた」の
”第1章 副作用の考え方のキホン!"を読んでみてください、
すべての薬剤師が読むべき内容です!
添付文書に副作用が記載される背景がわかって興味深いです。
また、医師は、
疾患を除外 → 医薬品の副作用かもしれない
という思考順なので
副作用らしさを高めるために、
薬剤師も基本的な医学知識や臨床推論を学ばなければならないと、ぼくは考えてます。
高齢者、妊婦・産婦・授乳婦、小児への投与
特殊な背景を有する患者に使用した情報が不足した医薬品は、
その情報量によって、テンプレート的な記載がありますよね。
正直、添付文書では答えが導けないケースが多いです。
論文、ガイドラインなどで薬剤師が情報収集せねばならない領域です。
高齢者
高齢者は日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」や厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」などが参考資料です。
海外のガイドラインもあるので参考にするとよいでしょう。
妊婦
妊婦は国立成育医療研究センターの妊娠と薬情報センターが情報収集しています。
授乳中に使用できる薬、使用できない薬の一覧、インフルエンザ治療薬について情報があります。
授乳婦の薬の使用できる薬は後述する母乳とくすりハンドブック 改定3版 2017年発行の方が充実しています。
妊婦に使用できる薬は、他の書籍を購入されたほうが実務で役立つでしょう。
その他に抗リウマチ薬の登録調査や妊娠初期のチアマゾール服用に伴う先天異常発生率を調べたPOEM Studyを見ることができます。
授乳婦
授乳婦は大分県の小児医会・産婦人科医会・薬剤師会が協同で作成した母乳とくすりハンドブック 改定3版 2017年発行がとても参考になります。
ぼくも問い合わせに重宝していますので、入手しましょう。
小児
小児の使用例は、小児用の薬剤でない限り情報はわずかしかありません。
治験に参加するのは成人が主で、小児はごくわずかなのが普通です。
添付文書も「未熟児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない」
とテンプレート的な記載が多いですよね。
海外の使用例やガイドラインなどを参考にするしかありません。
国立成育医療研究センターの小児医療情報収集システムは医療機関から患者の病名、薬剤、検査の情報を収集し、
小児に特化したデータベースの構築を行っています。
薬物動態
オレンジブック、ブルーブック
後発品の生物学的同等性の品質評価は医療用医薬品品質情報集のオレンジブックがまとめてます。
あとからブルーブックという後発品の成分ごとに品質の情報をまとめたものが。
後発品の選択の際に参考にするといいですね。
この2つは発行している母体が異なりますが、
ブルーブックは厚生労働省、PMDAがかかわっており、各社の生物学同等性試験結果をまとめて表示するので比較しやすい印象です。
ただ、2019年5月2日時点でブルーブックにまだのっていない後発品がありました。
これから順次、まとめていくでしょう。
添付文書の改定記載要領 2019年4月〜
厚生労働省のこちらをご確認ください。
日本製薬工業協会もまとまってます。
大きな変更点は
- 「原則禁忌」の廃止 → 4. に記載
- 「慎重投与」の廃止 → 4. に記載
- 「高齢者への投与」、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」、「小児等への投与」の廃止 → 4. に記載
- 「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設
- 「生殖能を有する者」、「妊婦」、「授乳婦」、「小児」、「高齢者」
- 「慎重投与」に記載されていた「合併症・既往歴等のある患者」、「腎機能障害患者」、「「肝機能障害患者」
- 項目の通し番号を設定
その他に下記があります。
- 「副作用」の「概要」の記載の廃止
- 「使用期限」の廃止と「有効期間」の記載
- 後発医薬品の添付文書の記載要領の見直し
- ワクチンの添付文書の記載要領の改定
2024年3月末までは経過措置のため新旧が混合します。
順次改定されていくでしょう。
読み終えたらこの本もおすすめ
「添付文書がちゃんと読める統計学」でデータの考え方の基本を勉強しましょう。
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