ステロイドや生物学的製剤を使用している患者は、感染リスクが高いので注意しましょう、と言われますよね。
具体的な基準を知っていますか?
曖昧な知識で整理するためステロイド、生物学的製剤に伴う勉強したことをまとめました。
ステロイドを使用している患者の感染症リスク
高用量のステロイドを使用している患者は
ニューモシスチス肺炎(PCP)の予防を考慮します。
- プレドニゾロン20mgを2〜3週間以上使用する場合はPCP予防するべき(PMID: 11565082)
- プレドニゾロン5mgを数ヶ月、数年単位で使用している場合にPCP予防をするかはコンセンサスがない
現在の使用mgだけでなく蓄積mgも影響します。(PMID: 22241902)
PCPではありませんが、
以前、長期間使用したプレドニゾロン5mgを2ヶ月くらい前に中止した方が、真菌を起因菌として想起していなかったため真菌感染症の対応が後手になったことを反省しました。
これが忘れちゃいけない臨床経験ってことでしょうね。
同じことをしないよう心にメモしてます。
“プレドニゾロン5mgを数ヶ月、数年単位で使用している場合にPCP予防をするかはコンセンサスがない”
これ、他の感染症でも悩むのですが
低用量のプレドニゾロンは、
ピンポイントに用量だけみると感染症リスクが高くないと考えがちですが、
長期の使用例は感染臓器によって想起する起因菌に注意が必要ということでしょうね。
生物学的製剤を使用している患者の感染症リスク
結核、HBVのスクリーニングは必須です。
活動性感染症(抗菌薬が必要な感染症、活動性結核、帯状疱疹、急性BおよびC型肝炎、致死的真菌感染症)や未治療の潜在性結核を合併している患者には禁忌です。
生物学的製剤の使用中に生ワクチンを接種するのは禁忌です。
TNF阻害剤を使用している患者のPCP予防
TNF阻害剤使用中に一律のPCP予防は推奨されていません。
TNF阻害剤使用中のRA患者におけるPCPリスク因子は、
- 年齢65歳以上
- プレドニゾロン6mg/日以上
- 既存の肺病変
(PMID: 17978303)
抗IL-6受容体抗体を使用している患者の注意点
抗IL-6受容体抗体(サリルマブ、トシリズマブ)は,
発熱や倦怠感のような全身症状とCRPの上昇を抑制するため、
体温やCRPの少しの上昇を過小評価してしまうことがあるので注意が必要です。
※ IL-6は免疫応答系に関与するサイトカイン。
そんなネガティブな一面をもつ抗IL-6受容体抗体の覚え方。
サリルマブは “ケブザラ”
トシリズマブは “アクテムラ”
「毛深い悪魔(ケブかいアクま)」
悪魔って悪いことをするので
“発熱やCRPをマスクする” イメージをもつかなあって(汗)
後輩に言ったら苦笑いされた。
どうでもいいですね…
ニューモシスチス肺炎(PCP)予防
PCP予防は、
- HIV/AIDS患者はCD4<200/μLで適応
- non-HIVは明確な指標がない
non-HIVは個々にリスクを判断します。
- 基礎疾患が何か?
- 使用中の治療薬
血液悪性腫瘍、造血幹細胞移植、固形臓器移植、固形腫瘍は国際ガイドラインがあります。
リウマチ・膠原病、炎症性腸疾患などのPCP予防をどうするかが問題になります。
血液悪性腫瘍および固形悪性腫瘍の患者におけるPCPの診断、予防および管理に関するガイドライン2014(PMID: 25482745 )
造血細胞移植レシピエントの感染性合併症予防ガイドライン(PMID: 19747629)
固形臓器移植におけるニューモシスチス肺炎(PMID: 23465020)
自己免疫疾患は、
すでに高用量のプレドニゾロンを使用しているため
PCP予防を開始しているケースが多いですが、
RAの場合はステロイドが低用量がゆえに
PCP予防がされずPCPを発症することがあるため注意が必要です。
先に述べたように、
RAでTNF阻害剤使用中の場合、
PCPリスク因子として下記を考慮してPCP予防します。
- 年齢65歳以上
- プレドニゾロン6mg/日以上
- 既存の肺病変
(PMID: 17978303)
参考図書
2019年1月に発刊された
「レジデントノート増刊号 免疫不全患者の発熱をマスターせよ!」
なぜ感染症リスクが高くなるのか引用文献をまじえて説明してくれるので、おすすめです!
興味がある方はこちらの記事もご覧ください。

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