発熱性好中球減少症(FN)は命に関わるため抗菌薬の選択が重要です。
そもそもFNって何か説明できますか?
とりあえず、カルバペネム+バンコマイシンがルーチンでよいですか?
抗菌薬を根拠をもって選択できる薬剤師としてになりたいですよね。
勉強したことをまとめました。
発熱性好中球減少症(FN)の勉強したこと
発熱性好中球減少症(FN)とは
好中球数が500/μL未満、または、1000/μL未満で48時間以内に500/μL未満に減少すると予想される状態で、かつ、腋窩温37.5℃以上(口腔内温38℃以上)の発熱を生じた場合を、発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)と定義する。
引用:日本臨床腫瘍学会の発熱性好中球減少症診療ガイドラインより
発熱性好中球減少症のポイント
FNは重症で進行が早い感染症を起こすリスクが高いので、早めの対応が大事です。
好中球が減少している状態は、通常、炎症部位に浸潤する好中球が少ないため、貪食能が低下します。そのため症状が出づらい状態であると認識しましょう。(PMID: 1052668)
化学療法中の患者がFNになった場合は、皮膚・粘膜のバリアが破綻していることが多いため、常在菌が起因菌になることがあります。
重症度
FNの重症度はMASCCスコア(PMID: 10944139)で評価します。
特徴 | スコア |
---|---|
FNの症状:症状なし または 軽度 | 5 |
FNの症状:中等度 | 3 |
血圧低下なし(収縮期血圧>90mmHg) | 5 |
慢性閉塞性肺疾患なし | 4 |
固形腫瘍または真菌感染症の既往がない血液悪性腫瘍患者 | 4 |
脱水症状なし | 3 |
外来患者 | 3 |
60歳未満 | 2 |
※ MASCCスコア:満点26点 |
- 高リスク群:20点以下
- 低リスク群:21点以上
低リスク群はCVA/AMPC+CPFXの内服治療でも可能と考えられてます。
ペニシリンアレルギーがある場合は、CVA/AMPCをCLDMに変更します。
原因微生物
血流感染症はグラム陽性球菌が多いですが、緑膿菌を含めたグラム陰性桿菌のカバーが重要です。
好中球減少症が7〜10日以上続くと真菌感染症を起こしやすいの注意が必要です。
真菌はカンジダが血流感染症、アスペルギルスが肺炎の起因菌になるので頭に入れておきましょう。
(PMID: 23975584 )
治療
入院で治療する場合、基本的には以下の抗菌薬からempiric therapyを開始します。
- セフェピム(CFPM)
- タゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC)
- メロペネム(MEPM)
必要に応じてその他の微生物をカバーします。
ESBLなどのカバーを考慮すべき状況
FNでESBLなど耐性グラム陰性桿菌のカバーを考慮する状況は下記です。
- 敗血症性ショックなどの重症例
- ESBLな耐性グラム陰性桿菌の定着、感染既往がある
- FNの原因としてESBLによる感染症の頻度が高い
(欧州のFNガイドライン2013年 PMID: 24323983)
グラム陽性球菌(MRSA)のカバーを考慮する状況
FNのempiric therapyとしてグラム陽性球菌(MRSA)のカバーを考慮する状況は下記です。
(米国感染症学会のガイドライン2011年 PMID: 21205990)
個人的には2つ気になる点があります。
1.肺炎
ここで言う“肺炎”はMRSA肺炎でしょうが、MRSA肺炎の頻度を考えるとルーチンでカバーするか意見がわかれるところです。
2.キノロン予防内服中のFN
“キノロン予防内服中のFN”もカバーしていない微生物を考えるとMRSAが起因菌として考慮すべき状況になるからでしょうね。
ただし、これも意見がわかれるところで、
キノロン内服中のFN → バンコマイシン追加!を安易にするのは、何かを見落とす気がします。
そうは言っても、FNは症状の進行が早い緊急事態なのでカバーしていない微生物をカバーすることを否定しているわけではありません。
感染症診療の原則を忘れず、に抗菌薬を選択の根拠が説明できることが重要です。
1、2ともに治らない原因を考えて、ロジックに対応できるよう、ぼくも精進します。
嫌気性菌のカバーを考慮する状況
FNのempiric therapyで嫌気性菌をカバーする必要はありません。(PMID: 15937905)
ただし、感染臓器によっては起因菌になるので注意が必要です。
腹腔内感染症、膿瘍形成、歯周炎などは考慮した方がよいでしょうね。
抗菌薬をやめるタイミング
米国感染症学会のガイドライン(PMID: 21205990)では、
発熱の原因が不明の場合は、以下の2つを満たせば抗菌薬終了を考慮できます。
- 2日以上解熱している
- 好中球が500/μL以上
感染臓器がわかっている場合は、その感染症の標準治療に準じます。
参考図書
2019年1月に発刊された
「レジデントノート増刊号 免疫不全患者の発熱と感染症をマスターせよ!」
FNに関わる方なら知識の整理、アップデートができておすすめです。
各項目の引用文献も充実しています。
興味があればこちらの記事もご覧ください。
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